更新日:2020年10月12日

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2月定例会(令和2年2月19日)

令和2年県議会2月定例会の開会に当たり、一言申し上げます。

本県を取り巻く情勢

はじめに、暖冬・少雪の影響について申し上げます。

今冬は暖冬・少雪が続き、山形市の1月の平均気温は2.3℃と、平年より2.7℃高く経過しました。降雪量も依然として少ない状況が続いており、県内の観光・レジャー事業や除雪を行う建設業の中小企業者を中心に、売上減少などによる資金繰りへの影響が懸念されることから、相談窓口の設置と商工業振興資金融資制度による支援策を講じたところであります。引き続き、中小企業者への影響の把握に努め、しっかりと対応してまいります。
現在のところ、農作物への大きな影響はみられておりませんが、さくらんぼ等果樹では、3月以降、気温が高く経過した場合には、発芽や開花が早まり、寒の戻りにより凍霜害(とうそうがい)の危険が高まることが予想されます。また、水稲では、今後も降雪・降水が少ない状況が続きますと、春の代かきや田植えをはじめ、夏場の農業用水も不足するのではないかと不安の声が生産者等から聞かれるところです。このため、県としましては、農作物の生育状況の把握に努め、防霜(ぼうそう)対策など気象に対応した農作物の技術指導を徹底するなど、万全を期してまいります。併せて、農業用水につきましても、農業用ダムやため池の貯水状況を逐次把握し、計画的に貯水を進めるなど確保に努めてまいります。

次に、新型コロナウイルス感染症への対応について申し上げます。

新型コロナウイルス感染症につきましては、昨年12月以降、中国湖北省武漢市を中心に発生し、人から人への感染が確認されるなど、世界的に感染が拡大しており、世界保健機関(WHO)の発表では、2月18日14時現在、世界全体の感染者は73,332人、死亡者は1,873人となっております。
県では、1月24日に「新型コロナウイルス感染症に係る対策会議」を設置し、2月7日には私を本部長とする「山形県新型コロナウイルス感染症対策本部」に移行し、情報の共有と必要な対策を実施しているところであります。具体的には、県内2つの空港や酒田港における検疫所と連携した水際対策に加え、感染が疑われる患者を把握した場合は、保健所が診療体制等の整った医療機関に誘導のうえ、診察や治療を行う体制を整備したほか、相談窓口を設置して、県民の皆様からの相談に広く対応しているところであります。また、海外への渡航を計画する県民に向けて注意喚起を行うとともに、旅館・ホテルに対し、宿泊者が医療機関の受診を要する場合等の対応について周知いたしました。引き続き、県民及び本県を訪れる観光客等の双方の安全を確保し、県内で安心して過ごしていただけるよう、感染症予防対策の周知徹底と医療機関の受診体制の確保に努めてまいります。
観光面への影響としましては、県内の一部の宿泊施設でキャンセルが出ており、また、国際交流の面では、一部の私立高等学校において、台湾で行う予定だった海外学校行事を中止したとお聞きしております。企業活動への影響につきましては、春節明けの操業再開の延期などにより中国に進出している県内企業の生産活動への影響が懸念されるほか、中国に進出している大手自動車メーカーの操業再開の遅れなどにより日本国内での生産に必要な部品が一部調達できないなどの影響が出始めており、今後、県内企業に波及することも懸念されることから、その動向について注視してまいります。

次に、株式会社大沼の破産について申し上げます。

株式会社大沼の破産では、1月26日に191名の従業員全員が突然解雇されました。また、テナントの従業員は266名、取引先企業や債権者は900に上ります。大沼の従業員等の皆さんが再就職できるかどうか、そして県内取引先の資金繰り、さらには核となる施設を失った中心商店街への深刻な影響が懸念されるところであります。
県では、1月28日に雇用及び金融の特別相談窓口を設置して相談対応にあたるとともに、1月31日には、私と山形市長、山形労働局長、連合山形会長の4名で、山形県経営者協会をはじめ9つの県内経済団体等に対し、大沼の破産などに伴う離職者の再就職支援に係る緊急要請を行ったところであります。
このたびの突然の解雇などにより、テナントを含めて、大沼で働いていた多くの方々が職を失い、今後の仕事と生活、さらには人生設計に大きな不安を抱えていると思われましたので、県では、こうした方々の不安に官民労が連携して対応するため、共に緊急要請を行った山形市、山形労働局、連合山形、さらには、山形県労働者福祉協議会、産業雇用安定センター山形事務所が一体となって、様々な相談から再就職まで総合的な支援を行う「株式会社大沼関連再就職等支援本部」を2月6日に開設いたしました。また、当面の生活安定を図るための生活資金の無利子貸付制度として「山形県暮らし安心資金」を創設し、関係市町村とも連携しながら、きめ細かな相談対応に取り組んでいるところです。

次に東京2020オリンピック・パラリンピックについて申し上げます。

今年夏、待ちに待った東京2020オリンピック・パラリンピックが開催されます。既に東京パラリンピックの日本代表に内定している水泳の東海林大(だい)選手、テコンドーの太田渉子選手をはじめ、本県出身、本県ゆかりの選手の活躍が大いに期待されるところです。
本県でも聖火リレーが6月7日、8日に予定されており、東京オリンピック・パラリンピックを、県を挙げて大いに盛り上げてまいりたいと考えております。

それでは、今回、提案いたしました議案の説明に先立ち、県政運営の所信の一端を申し上げ、議員各位並びに県民の皆様の御理解と御協力を賜りたいと存じます。

これからの県づくりの基本的考え方

冒頭で申し上げましたオリンピック・パラリンピックは、東京での開催は半世紀ぶりとなります。この間、我が国は、高度経済成長を経て、一人当たりGDPは世界トップレベルとなり、多くの人が便利で快適な生活を送れるようになりました。
こうした中、政府の「国民生活に関する世論調査」では、国民の意識は、「物質的な豊かさ」よりも「心の豊かさ」を重視する人の割合が高まり、その差は長期的に拡大傾向にあります。
国際社会に目を転じますと、平成27年、国連サミットにおいて、国際社会全体の目標として、「誰一人取り残さない」持続可能な社会の実現に向けた「SDGs(エスディージーズ)」(持続可能な開発目標)が採択されております。我が国においても、政府はもとより、地方自治体、民間企業、NPO、若者などの間で、環境への配慮をはじめ、「持続可能性」に対する関心や取組みが広まりを見せております。
元号も「平成」から「令和」へと変わり、時代の潮流も、限りない「成長・拡大」を追い求めるものから、成熟した社会にあって、持続可能性を重視し、暮らしのゆとりや楽しみの享受、自分らしさを発揮できる生き方など、「真の豊かさ」を大切にするものへと大きく変化しております。
これからの県づくりにあっては、こうした時代の潮流をしっかりと認識しながら、少子高齢化を伴う人口減少の加速、グローバル化の進展や複雑化する国際環境、「第4次産業革命」とも呼ばれる急速な技術革新の進展など、社会経済環境の変化に的確に対応していくことが重要と認識しております。

本定例会で御審議いただく「第4次山形県総合発展計画」は、このような考えのもと、これからの県づくりの方向性を示すものであります。
「人と自然がいきいきと調和し、真の豊かさと幸せを実感できる山形」を基本目標に、ライシャワー元駐日大使が「山の向こうのもう一つの日本」と称賛した本県ならではの人と自然の健全なバランスのもと、県民一人ひとりの希望や想いを大切にして、真の豊かさ、生きがい・幸せを実感でき、将来にわたって持続的に発展し続ける、質の高い「新しいやまがた」の暮らし、社会経済、地域の姿を目指してまいります。

このような姿を実現するため、これからの県づくりにおきましては、「人材」、「イノベーション」、「国内外の活力」を推進力としてまいります。

一つ目の「人材」は、県民一人ひとりの希望を実現し、本県が持続的に発展し、地域社会や産業経済の活力を維持・向上させていく基礎・原点であります。
将来を担う子どもたちの未来を切り拓く力の育成や、県民誰もがいつでも必要な知識や技術を習得できる機会の充実により、人材の資質を高めるとともに、年齢・性別・障がいの有無等に関わらず、意欲と能力に応じて、働き、活躍できる環境を充実させてまいります。
二つ目の「イノベーション」は、本県が将来に向けて力強く発展していくための源泉であります。
地域で新たな活力や魅力を生み出すとともに、やりがいのある仕事の創出や働きやすさを実現し、暮らしの質の向上へとつなげていくものであります。暮らしや産業、地域社会の様々な場面でICT等の先端技術を積極的に活用するとともに、自然や風土、伝統技術といった地域の特性・資源を活かした多様なチャレンジを促進してまいります。

三つ目の「国内外の活力」は、本県が誇る精神文化、豊かな自然、食、歴史、伝統文化などの資源をはじめ、本県の暮らしやすさ、農業や地域おこしなどのチャレンジの可能性を広く発信して、国内外の人々を魅了し、観光・交流、移住を拡大していくというものであります。
併せて、そうした観光・交流を支える高速交通基盤等のインフラ整備につきましても着実に推進してまいります。

このような3つの推進力を活かした県づくりを展開していくためには、本県の特性・資源を活かした基盤を充実していく必要があります。
人と人との絆、充実した医療・福祉・子育て環境、仕事と家庭の両立、豊かな自然・精神文化、環境と調和した暮らしなどをしっかりと維持・確保し、活かしていかなければなりません。また、当面、人口減少の進行が避けられない中、地域社会や産業の活力の維持・向上の観点からも、「人材」、「イノベーション」、「国内外の活力」を重視した県づくりが重要であります。
このような県づくりを、中長期的な視点も踏まえて、総合的・効果的に展開していくことは、県民の暮らしの質や地域社会・産業経済の活力など「県の総合力」を維持・向上させ、本県が自立的・持続的に発展していくための力を高めていくことになります。
こうして、県民が本県の将来に明るい前向きな展望が持てるようになり、将来を担う多くの若者が県内で暮らし、働き、結婚・子育てしたいという希望を持ち、その希望が実現することにつながっていきます。
これにより、若者をはじめとする多くの人材が山形での暮らしを希望するという「人口減少の対応策と抑制策」の好循環を創出し、少子高齢化を伴う人口減少を乗り越えていきたいと考えております。

こうした基本方向を踏まえ、これからの県づくりの推進方向として、5つの政策の柱を掲げたところであります。

一つ目の柱は、「次代を担い地域を支える人材の育成・確保」であります。

学校教育や生涯を通した多様な学びの機会の充実により、県民一人ひとりの能力・資質を高め、地域社会において力を発揮する人材、主体性・柔軟性を持って国内外で活躍する人材など多彩な人材を育成してまいります。さらに、若者の志向に合った就業の受け皿づくりや本県ならではのライフスタイルの発信などにより、若者の県内定着・回帰の促進と国内外の多様な人材の受入れ拡大につなげてまいります。

二つ目の柱は、「競争力のある力強い農林水産業の振興・活性化」であります。

長年にわたり本県の基盤となってきた農林水産業について、多様な担い手の確保や高度人材の育成、生産・経営基盤の整備、スマート農林水産業の振興等を通して、新たな活力を創出し、持続的な発展へとつなげてまいります。そして、本県産農畜産物のブランド力の強化や「やまがた森林ノミクス」の発展・加速、付加価値の高い水産業の振興など、競争力があり、収益性の高い農林水産業を展開し、「食料供給県」としての存在感をより一層高めてまいります。

三つ目の柱は、「高い付加価値を創出する産業経済の振興・活性化」であります。

県民の暮らしの安定や地域の活力向上に向けて、製造業をはじめとする本県産業の強みや先端技術を活かした多様なイノベーションの創出、地域における企業間ネットワークの形成などを促進し、本県産業の競争力・成長力を高めてまいります。
また、多彩な地域資源を活かした魅力ある観光地域づくりと戦略的な誘客に加え、文化芸術やスポーツも積極的に活用することにより、国内外からの観光・交流を拡大し、「観光立県山形」の確立を目指してまいります。

四つ目の柱は、「県民が安全・安心を実感し、総活躍できる社会づくり」であります。

県民の暮らしや経済活動の基盤となる安全の確保に向けて、自然災害に対するソフト・ハード両面からの対策を進めるなど、災害や世界的な感染症の流行など様々なリスクに強い県づくりを推進してまいります。また、県民が住み慣れた地域で生涯を通して安心して暮らしていけるよう、医療・介護・福祉の提供体制を充実するとともに、地域における支え合いの取組みを促進してまいります。加えまして、若者の結婚・出産・子育ての希望実現に向けて、地域と連携した結婚支援や子育てにやさしいまちづくりなど、総合的な少子化対策を充実強化してまいります。

五つ目の柱は、「未来に向けた発展基盤となる県土の整備・活用」であります。

地域産業の活性化や県民生活の質の向上など、本県の今後の発展の重要な基盤となるICT等の積極的な利活用を推進するとともに、国内外の活力を呼び込む交通ネットワークの充実を進めてまいります。
そして、国際社会の一員として地球環境問題への主体的な参画を進めるとともに、本県の豊かな自然環境や地域に受け継がれる文化資産を保全・活用し、次世代に継承してまいります。

以上のような方向性のもと、「県民視点」、「対話重視」、「現場主義」を基本に、県民や市町村、民間企業、NPO、大学等の多様な主体と連携して、積極的・効果的に施策を展開し、県民が本県で暮らす幸せを感じ、本県を訪れる人も幸せを感じられる、「人と自然がいきいきと調和し、真の豊かさと幸せを実感できる山形」の実現を目指してまいります。

次に、このたび提案いたしました令和2年度当初予算について御説明申し上げます。

令和2年度当初予算を取り巻く環境

令和2年度の地方財政につきましては、地方の安定的な財政運営に必要となる地方一般財源総額について令和元年度を上回る額が確保され、地方の総意としてその縮減を要請してきた臨時財政対策債は前年度と比べて減少となりました。また、地方法人課税の偏在是正措置による財源を活用し、地域社会の維持・再生に取り組むための経費が新たに地方財政計画に計上されたところであります。
一方で、本県の一般財源につきましては、地方交付税と臨時財政対策債を合わせた実質的な地方交付税は増加を見込んでおりますが、県税は10年ぶりの減少の見込みとなり、引き続き厳しい予算編成を余儀なくされたところであります。

令和2年度主要施策等

次に、新年度における主要施策の概要について、「第4次山形県総合発展計画」に基づく5つの政策の柱に沿って御説明申し上げます。

はじめに、第一の柱「次代を担い地域を支える人材の育成・確保」について申し上げます。

時代の転換が進む中、少子高齢化を伴う人口減少の進行が大きな課題となっております。人口減少は、地域社会や暮らしの維持・向上を支える力、産業経済の価値を生み出す力といった、県全体の発展の基盤に影響を与え、また、県が発展するための力の低下は、さらなる少子化、人口減少につながっていくことから、その解決に粘り強く取り組んでいかなければなりません。このため、首都圏の若者を主なターゲットに、県・市町村・産業界・大学等オール山形での新しい推進組織のもと、移住定住・人材確保策を一体的に展開してまいります。また、移住世帯を対象に、新たに家賃を最大2年間支援します。加えまして、ひとり親の移住世帯に対しては、引越費用等を支援するとともに、さらに3年間の家賃支援を上乗せするほか、トータル5年間の食の支援を行います。
次に、学力向上支援チームを新たに設置し、市町村教育委員会とも連携しながら、各小中学校を訪問して授業改善や学校運営等について指導・助言を行うとともに、ICTを活用した「わかる楽しい授業」の構築に向けた実践的な活用法の実証と、全県への普及を推進してまいります。
また、少年少女発明クラブの会員数の拡大や、組織運営や活動強化を支援し、「はやぶさKIDS」として将来の本県産業を担う理系人材の育成・確保を図ってまいります。
海外でのキャリアアップを目指す本県出身の若者等を支援するとともに、海外で活躍している人材の帰国後の県内での起業・就業を促すことにより、本県産業の持続的な発展を担う人材の育成・確保を図ってまいります。
SNSの機能を効果的に活用し、県内高校の卒業生を対象に、イベントや祭りなどの地域情報や就職情報など、一人ひとりの属性に応じたきめ細かな情報提供を行ってまいります。
児童養護施設等において、退所後に大学や専門学校に進学した学生に対して、就職活動費や自動車運転免許取得費等、県内での就労を促進するための支援を行い、子どもたちの自立支援と若者の県内定着促進の両立を図ってまいります。
人手不足感の強い介護分野における外国人の受入れを促進するため、留学生と介護施設とのマッチング支援や、県内で働く技能実習生等を対象とした研修を実施し、外国人介護人材の受入れ体制を強化してまいります。

次に、第二の柱「競争力のある力強い農林水産業の振興・活性化」について申し上げます。

農林業専門職大学の令和5年4月開学を目指し、基本計画の検討や、校舎の基本・実施設計、農林大学校旧学生寮の解体工事を進めてまいります。
また、中山間地域において、ラジコン草刈機などの新技術の導入による農地管理の省力化や、農業・農村の担い手の育成・確保により、持続可能な農業・農村の振興を図ってまいります。
新品種「やまがた紅王」の令和4年の先行販売開始を見据え、大玉で着色の良い果実を安定生産するための技術普及や認知度向上により、早期ブランド化を図ってまいります。
園芸作物の農繁期における農家の労働力確保に向けて、海外からの農作業体験モニターツアーを試行的に実施し、外国人材の受入れ可能性を検証してまいります。また、園芸産地の人手不足対策や生産性向上に向け、さくらんぼやえだまめ等に要する施設整備等につきましては、国庫補助事業を活用できない事例にもきめ細かに対応するため、市町村と連携して支援してまいります。
畜産業の担い手支援につきましては、規模拡大や省力化・生産性向上のための施設整備等を実施する意欲ある畜産業の担い手を支援し、畜産経営の競争力強化を図ってまいります。
「やまがた森林ノミクス」につきましては、再造林のための経費について、100%支援を引き続き実施するほか、製材工場のJAS(ジャス)認定の取得に対する支援等により、県産木材の利用拡大を図ってまいります。加えまして、新たな森林管理システムの推進主体となる市町村への支援や、林業事業者における高性能林業機械の導入促進などにより、緑の循環システムの構築を進め、県民総参加による「やまがた森林ノミクス」を更に推進してまいります。
庄内浜産水産物の付加価値向上と安定供給のためのモデル事業として、ヒラメやマダイ、サクラマス等の蓄養技術を活用した活魚出荷の有効性を検証してまいります。

次に、第三の柱「高い付加価値を創出する産業経済の振興・活性化」について申し上げます。

非正規雇用の処遇改善と労働者の所得向上を一体的に推進するための奨励金制度につきまして、令和2年度からは、業務改善に係る奨励金について、最低賃金引上げ額に応じたコースや対象事業場の規模を、政府の助成対象に合わせて拡充いたします。また、人手不足感が高まる中、県内企業の持続・成長に必要な労働生産性の向上を図るため、ロボットの導入促進、AIトップエンジニアを目指す養成研修を開催いたします。
加えまして、本県の強みを活かした世界最先端の技術や、大きく成長が期待される分野で、今後の本県産業をけん引する人材を掘り起こし、産学官金で構成する専門支援チームによりスタートアップを支援してまいります。さらに、これまで埋もれていた、きらりと光るものづくり技術を有する企業を、幅広い分野で高い知見を持つ専門家の目利きにより掘り起こし、その技術等を活かした企業の成長発展を促すため、成長戦略の策定とその実行を支援し、技能・技術を有する企業の競争力を高め、新たなビジネスチャンスに対応し、未来にわたり勝ち残っていく企業を創出してまいります。
関西圏に向けた情報発信に取り組むため、「MYハーモニープラン」を共有する本県と宮城県との合同で、期間限定のアンテナショップを新たに大阪市に出店し、県産品の販売と併せて本県の魅力をこれまで以上に発信するとともに、消費者動向等の調査を実施いたします。
また、本県が誇る精神文化の一つである「出羽百観音」をブランドとして確立し、次世代に大切に受け継ぐとともに、観光誘客に資する地域資源として活用することにより観光交流人口の拡大を図る方策について、新たにプロジェクト会議を設置し、検討してまいります。
海外山形県人会の中心的役割を果たしてきた移住一世、二世の高齢化が進む中、県人会においては各国で県の魅力発信などに御協力いただいており、今後も重要なパートナーであることから、県人会の担い手育成を支援するための若手日系人を招いた交流事業を実施します。
そして、県内で行われる東京2020オリンピック聖火リレーやパラリンピック聖火フェスティバルの実施、また、東北・新潟の情報発信拠点となる「東北ハウス」を活用することにより、本県への観光誘客や地場産品の認知度向上に積極的に取り組みます。

次に、第四の柱「県民が安全・安心を実感し、総活躍できる社会づくり」について申し上げます。

昨年10月に発生した台風第19号による豪雨災害を受け、頻発化・激甚化する浸水被害に対応するため、県が管理する排水樋管(ひかん)の操作環境改善や水防活動支援体制の強化等の内水(ないすい)被害軽減対策に緊急的に取り組んでまいります。また、大規模災害に備え食料等を備蓄することとしておりますが、令和2年度からは、備蓄物資として、乳児用液体ミルクや使い捨て哺乳瓶を新たに備蓄してまいります。
除雪オペレーターにつきましては、高齢化に伴い、今後多くの方が引退されることが見込まれることから、新たな担い手確保に向けて、除雪機械の運転に必要な免許の取得等に要する経費を支援してまいります。
高齢運転者の交通安全対策を強化するため、運転免許を自主返納した高齢者が、協賛事業者による様々な特典やサービスを受けられる仕組みを構築し、自主返納しやすい環境づくりを進めてまいります。
次に、若い世代、とりわけ女性の県外流出が一層加速していることから、県外の若い女性を主なターゲットとし、県内の子育て環境や子育て支援制度などをSNSで情報発信するとともに、出会い・結婚支援の展開など、若い女性の移住を促進します。
また、もう一人子どもが欲しいという希望を叶えるため、特定不妊治療による出産後に次の子を望み、継続して治療を受ける場合、政府の支援制度の回数に上乗せして支援してまいります。加えまして、双子など多胎児を安心して生み育てられる環境をつくるため、子育て経験のある育児サポーター等を派遣し、保護者の育児・家事を支援してまいります。
雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った、いわゆる「就職氷河期世代」に対して、就職活動や資格取得の経済的負担を軽減することにより、Uターンや正社員化を推進してまいります。
がん患者の外見変化に伴う精神的苦痛や身体的な負担を緩和するため、これまでの医療用ウイッグに加え、新たに乳がん患者の乳房補整具も支援の対象としてまいります。
医療的ケア児とその家族が安心して生活できるよう、県医師会など関係機関と連携して総合的な支援体制を構築するほか、長距離通院時に訪問看護師の付き添いや運転手を派遣することにより、家族の負担を軽減するための支援を新たに行ってまいります。
加えまして、山形で暮らし、山形で働く誰もが、ワーク・ライフ・バランスを実現し、幸せを実感できるよう、企業の一般事業主行動計画策定に向けた支援や、策定企業の従業員がサービスを受けられるワーク・ライフ・バランス応援パスポート(仮称)の交付により、中小企業等の取組みを後押ししてまいります。

次に、第五の柱「未来に向けた発展基盤となる県土の整備・活用」について申し上げます。

福島~米沢間トンネル整備の早期事業化、奥羽・羽越新幹線の早期実現に向けましては、県同盟と各地域の推進組織を核として、沿線の関係県とも連携し、機運醸成や政府等への要望活動の取組みを、引き続き推進してまいります。
また、利便性が高く持続可能な公共交通ネットワークの形成に向けた「地域公共交通網形成計画」を策定するほか、鉄道、路線バスに加え、コミュニティバス、デマンド交通などの県内交通の乗換情報が検索可能となるよう、利便性の向上に取り組んでまいります。
さらに、ICTを活用した新たな移動の仕組みの導入に向けて、住民所有の車両を活用した新たな乗り合いサービスの短期的な実証を行い、県内に展開させる普及モデルを検討してまいります。
遊佐町沖における地域協調型の洋上風力発電の導入に向けて、再エネ海域利用法に定める手続きを円滑に進めるとともに、漁業との協調策等の検討などにより、地域における関係者の理解浸透を進めてまいります。
拡大するイノシシ被害を防止するため、集落単位での鳥獣被害対策の研修会開催や、新たに「くくりわな」の補修資材の購入費用や猟銃事故防止のための射撃訓練で使用する弾代(たまだい)を支援してまいります。
水需要の減少や施設の老朽化等の課題に対応し、県内の水道事業の経営統合や施設の共同設置等、広域化について計画的な取組みを進めるため、令和3年度中の「水道広域化推進プラン」の策定に向けて検討を進めてまいります。

これら施策を推進するため所要の予算を計上した結果、一般会計当初予算額は、6,133億6,400万円となりました。
また、公債管理特別会計など10特別会計予算は、合計で2,316億8,463万円となりました。

財政運営につきましては、今後を展望しますと、依然として多額の財源不足が生じる厳しい状況が見込まれるところですが、産業の振興により、県民所得の向上、県内経済の成長につながる好循環を生み出し、県税収入の増加を図っていくことが重要と考えております。
そのうえで、今回の予算編成と同時に策定した「山形県財政の中期展望」において、歳入面では、県有財産の売却や有効活用の促進、基金や特別会計資金の有効活用等を図るとともに、歳出面では、引き続き事務事業の見直し・改善や、行政経費の節減・効率化などに取り組むこととしております。
こうした歳入、歳出両面からの対策を講じつつ、中長期的な財政健全化の目標として、今後の社会資本整備や産業振興の必要性にも留意しながら、行財政改革推進プランの期間中において、臨時財政対策債と補正予算債等を除いた実質的な県債残高の減少を推進しており、来年度はその最終年度を迎えます。引き続き、目標達成と調整基金の確保に努めてまいります。

令和元年度2月補正予算

次に、令和元年度2月補正予算について御説明申し上げます。
昨今の情勢を踏まえた緊急対応のため、まず、大型倒産に対する緊急特別対応としまして、冒頭申し上げました「株式会社大沼関連再就職等支援本部」の設置・運営の支援のための予算と、「山形県暮らし安心資金」の貸付のための予算を追加いたします。加えまして、少雪・暖冬等への対応としまして、県内の一部の宿泊施設においてキャンセルが出ている現状を踏まえ、2月末から約1か月間を対象として宿泊料割引を支援するなどの予算を計上いたします。さらに、新型コロナウイルス感染症への対応のため、水際対策として山形・庄内両空港に職員用防護服等を配備するほか、感染患者の発生に備えて病原体検査や患者の移送経費などを追加いたします。
また、政府の補正予算への対応としまして、防災・減災、国土強靭化の強力な推進や、農林水産業の成長産業化と輸出力強化の対策などの公共事業等を追加いたします。
こうした対応に、執行実績等に伴う補正を合わせますと、一般会計の2月補正予算総額は、211億2,800万円の減額となりました。
繰越明許費につきましては、ただいま申し上げた政府の補正予算への対応としまして、総額で203億48万円余を増額補正いたします。

予算以外の案件

次に、予算以外の案件の主なるものについて御説明申し上げます。
山形県県民会館条例を廃止する条例の設定及び山形県こども館条例を廃止する条例の設定については、山形県総合文化芸術館の開館及び施設や屋内遊具の老朽化等に伴い、山形県県民会館及び山形県こども館を廃止するものであります。山形県県営住宅条例の一部を改正する条例の制定については、県営住宅への入居の円滑化を図るため、連帯保証人の要件を緩和する等のものであります。
山形県部設置条例の一部を改正する条例の制定については、活力あふれる県づくりを目指し、また、県民に分かりやすい組織づくりを行うため、部の名称を改めるとともに、一部業務の移管を行うものであります。
第4次山形県総合発展計画の策定については、本県の新しい県づくりの指針となる計画を策定するためのものであります。
以上が、今回提案いたしました議案の概要でありますが、内容の詳細につきましては、議事の進行に従いまして、関係部課長より御説明申し上げますので、よろしく御審議のうえ、御可決くださいますようお願いいたします。

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