更新日:2023年11月1日
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森林は大きく分けて8つの多面的機能をもっています。
1.水環境の保全
森林があると表土には落ち葉が積もり、いろんな生物または微生物が生息するため、スポンジのようになり、雨水を速やかに地中に浸透させることができます。
そのため森林は降った雨を蓄えて、ゆっくりと川に流すことで、安定した水量を保ち、洪水や渇水を緩和します。
また、森林がある土壌を通った水は、雨水そのものよりもミネラル豊富な水になる、といったデータもあり、ミネラル豊富なきれいでおいしい水を河川に供給し、やがては海の水となり、豊かな海の幸を育むことにもつながっているのです。
2.県土の保全
森林があると、地表を覆う下草や落ち葉などが土壌の侵食を防ぎ、さらには樹木が根を張り巡らすことによって、土砂の流出や山腹の崩壊を防いでいます。
また、山に森林があれば、森林がない場合と比べて、流出する土砂の量が150分の1に抑えられると言われています。
3.生物多様性の保全
県内には約380種の鳥類、5千種の昆虫類をはじめとする、さまざまな野生生物の生息の場となっています。
また、食物連鎖の過程において森林は、「生産者」という役割を果たしており、「消費者」である動物の大切な栄養源となっています。
さらに動物の糞や死がいを分解する微生物などの「分解者」は、森林にとって大切な栄養分を提供してくれるという、持ちつ持たれつの関係で成り立っているのです。
このように森林は、遺伝子や生物種、生態系を保全するという大切な機能をもっています。
4.快適環境の形成
森林は蒸発散作用により、気温の急激な変化を緩和し、いわゆるヒートアイランド現象の防止や、強風や騒音等を防ぐ働き、さらに、樹木の枝や葉による塵埃の吸着などにより、私たちの暮らしをより快適な生活環境に形成する働きがあります。
5.保健・レクリエーション機能
森林は、フィトンチッドに代表される樹木からの揮発性物質により、直接的に森林浴や森林散策などにより健康増進効果が得られるほか、森林空間は行楽やスポーツの場を提供しています。
また、近年は里山林を森林環境教育の場として、積極的な利用が進んでいます。
6.森林文化の形成
森林のランドスケープ(景観)は、行楽や芸術の対象として人々に感動を与えるほか、伝統文化伝承の基盤として県民の自然観の形成に大きく関わっています。
また、本県においては「草木塔」など、地域固有の風土や文化形成に重要な役割を果たしています。
7.地球温暖化の防止
森林は光合成により二酸化炭素を吸収し、炭素を固定して、地球の温暖化防止に重要な役割を果たしています。
8.林産物等の生産
森林は、環境にやさしい資材である木材を生産します。木は建築資材や家具のほか、紙の原料などにも広く利用されています。
また、炭、キノコ、山菜などの産出のほか、工業原料や工芸材料も生み出しています。
荒廃が静かに進んでいます。
「やまがたに森林ってどのくらあるの?」でも説明したとおり、やまがたの森林面積のうち約30%がスギです。
このほとんどが人工林といって、人間が植えたものです。
これらは、遠くからの見た目では緑に覆われ、一見健全のように見えます。
しかし、様々な理由から手入れがなされていないスギの人工林は、中に入ると昼間でも光が入らず、木は細く混み合って地面が露出した暗黒の森に変わりつつあります。
コナラやミズナラを主体とした里山林も、スギと同じくらい本県の森林面積の30%を占めています。
かつて里山林は、日常生活に欠かせない燃料である薪や炭を生産し、いろんな肥料となる落ち葉を採取するなど、頻繁に人々が出入りしていました。
こうして若々しく明るい森林の姿が維持され、里山固有の草花や昆虫など、多くの生物たちを育んできました。
しかし、戦後の高度経済成長期になると、石油等の燃料が急速に普及し、それに伴い人々の生活様式が劇的に変化していきました。
そのため人々と里山林の関わりは次第に薄れ、人手が入らずに放置されていきました。
かつての若く明るい林から老齢化が進んだ森林は、活力が低下し、松くい虫やナラ枯れなどの病害虫や気象の害に弱く、薄暗く草花や昆虫も消えた沈黙の森へと変化しています。
人々と密接な関わりがあった頃の里山は、明るく活力にあふれていました。
里山林は、こうした明るい環境を好むギフチョウやカタクリなど、里山固有の生き物たちを育んできました。
しかし崩壊した里山林では、これら固有の生き物たちは生息の場を失い、生存の危機に瀕しています。
さらに、ニホンザルやツキノワグマといった奥山の生息域と人里とを緩やかに分離して、野生生物との緩衝帯の役割も果たしていました。
しかし、放棄されてヤブ状になり、人の気配も遠のくことで、野生生物が人里に近づきやすくなり、人への危害や農作物への被害が増大しています。
また、イヌワシ・クマタカといった猛禽類の繁殖率の低下が大きな問題となっており、その原因の一つとして、主要食物であるノウサギやヤマドリなどの減少が指摘されています。
これらの動物は明るく開けた里山林などに多く生息していることから、猛禽類にとっても安定した里山環境が不可欠です。
戦後、日本では荒廃した森林の復旧や復興資材としての木材の供給などの国民的な要請に応えて、林業活動が活発に行われました。しかし、高度経済成長下で急増する木材需要に国産材の供給が間に合わず、昭和35年の輸入自由化以降、安価な外材が大量に流通し始めました。その結果、スギ等の価格が下落し、国内の林業・木材産業の不振と木材自給率の低下をもたらしました。この傾向は、林業・木材産業関係者の努力にもかかわらず30年以上も続き、林業採算性の悪化に拍車をかけています。
この結果として、森林所有者の経営意欲の減退や農山村離れを引き起こし、さらには林業に従事する労働者が減り、手入れの進まない人工林の増加につながっています。
「森林のはたらきって何?」で述べた8つの多面的機能が発揮されなくなります。
手入れを行うことで「限りない資源」といわれる森林が生み出され、継続的に守られていきます。
植えた木の成長を促すため、雑草を刈ること。
植えた木の成長を邪魔するその他潅木類を伐る。植えた木でも、成長の悪い木や枯死しているような木は伐る。
枝葉が重なり合って光合成の効率が落ちている枝を切って、成長を促したり、枯れている木を切ることで、病気になるのを防ぐ作業。
森林全体の健全な成長を促すため、植えた木の中で成長の悪い木や、近づきあって競争しているような木を伐る。また、間伐することで地面に適度な光があたり、次の世代の植生も促せる。
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