更新日:2021年2月10日

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山形ものがたり YAMAGATA'S STORY

山形ものがたり YAMAGATA'S STORY

いいれきし山形の歴史文化編

出羽百観音

Dewa 100 Kannon Pilgrimage

最上、庄内、置賜、全県に広がる観音信仰。
願う旅、癒しの旅、四季の恵みを楽しむ旅。観音様と共に、自分なりの旅に出る。

最上第29番 大石田観音(石水山 西光寺)御本尊

山形県には、最上、庄内、置賜の3つの三十三観音霊場があります。三十三観音信仰は、観音様が広く人々を救うために祈りに応じて33の姿を持つことに由来し、日本では、西国三十三所、坂東三十三所、秩父三十四所などが知られています。1県に3つの霊場を持つ山形県では、合わせて「出羽百観音」と呼び、最上の庭月観音、庄内の金剛樹院(こんごうじゅいん)では、百観音巡礼の結願(けちがん)証を受けることができます。

最上三十三観音は、全国でも珍しく観音堂の名前に集落名が付けられています。置賜も同様です。これは、庄内三十三観音のような寺院による建立でなく、集落の人々が願いを込めて自分たちの手で観音堂を建てたため。最上で、観音堂を管理する寺のことを独自に「別当」と呼ぶのは、観音堂が建てられた後で祭りの際の読経などを頼まれるようになった寺が多くあることの表れでもあります。

巡礼の慣習が根付いたのは、最上三十三観音が最初とされています。観音信仰の普及とともに、自分の集落の観音だけでなく他所へも足をのばしてお参りするようになり、さらに次へ、次へと参拝の道を繋いでいったのが、巡礼の始まりといわれています。そして、次第に庄内三十三観音と置賜三十三観音にも巡礼の慣習が広まっていったと考えられています。


最上第1番 若松観音(鈴立山 若松寺)

 

最上三十三観音はその成り立ちから、古く歴史ある街並みや集落の中に観音堂が点在し、その佇まいにも個性と趣が強く感じられます。
庄内の霊場では寺院の本堂内に観音様が祀られていることが多く、出羽三山信仰とも深く関わり、名刹古刹を巡る楽しみと重なります。もうひとつの置賜は、最上と共通点が多く、今も半数が集落で大切に守られており、庶民性にあふれた霊場と言うことができます。

ところで、巡礼の装いとして欠かせない笈摺(おいずり)。実は、最上三十三観音巡礼から始まった、山形県ならではの特徴的な装束なのです。笈(おい)とは、山岳信仰の山伏が修行中に観音様や日用品を納めて背負っていた箱のこと。その際、着物の背中が擦れないように身に付けたのが笈摺なのです。
すなわち、巡礼者がこれを着ることは観音様を背負うことであり、笈摺に「同行二人 どうぎょうににん」と記すのは、自分ひとりでなく常に観音様と共に旅していることを意味しています。
また、満願し御朱印で真っ赤に染まった笈摺は、三途の川の通行証になるとして棺に納める慣習が今も大切にされています。


庄内第2番 羽黒山・金剛樹院

 

巡礼の道は、いまでは通ることの少なくなった旧街道や集落の奥です。バイパスなどの幹線道路を車で抜けるだけでは気づけない、古い町並みや文化のはざまを通り抜ける旅に、きっと時間が巻き戻されるようなロマンを感じることでしょう。見渡す限りの水田、木々がざわめく山間、生活の匂いがする街中。山形の原風景のような景観との出会い、地元の人との触れ合いに心が温かくなります。道中の癒しとして、有名な温泉地はもちろん、どの市町村でも温泉を楽しめるのも山形の魅力。土地や季節によって異なる美食も、欠かせない楽しみです。

観音堂では、名前、住所、願いを書いた木の札をお堂に打ち付けていました。観音堂を札所(ふだしょ)、巡礼を「札(ふだ)打ち」と呼ぶのは、このためです。なお、現在は紙札が使われています。観音堂の壁一面を埋め尽くす札。長い間風雨に晒(さら)されて薄く擦り切れてしまった札。自分や大切な人のために願いを込めた札。人々の心の拠り所となってきたことを物語る風情に、山形の観音信仰の厚み、深みを感じます。

巡礼の始まりを考えるとき、巡る順番を気にする必要は全くありません。満願という概念も、あとから出来たものだといいます。まずは、近くや参拝したいと思う観音堂に出かけてみることが第一歩。すると自然に、観音様を身近に感じ、ほっと安らいだ気持ちになれるでしょう。歴史ある情景、集落ごとに異なる趣に触れ、豊かな自然や四季折々の楽しみなど、山形全県を巡る百観音の旅は、新しい自分への気付きや、明日へのパワーをもたらしてくれるに違いありません。

<取材協力>
最上三十三観音札所別当会・庄内札所霊場会・置賜三十三観音札所会


紙札

 

ひとくちメモ

観音様を拝観できる十二年に一度の特別な年

通常、霊場のご本尊は「秘仏」として非公開となっています。最上三十三観音では、開創500年にあたる昭和7年と開創555年祭が実施された昭和62年に御開帳されて以降、平成8年、平成20年と、子歳(ねどし)に限って御開帳されてきました。間近にありありと観音様を拝観することができる特別な年です。なお、令和2年に予定されていた子歳連合御開帳は、令和3年に延期されます。

お問い合わせ
最上三十三観音札所別当会

  • 第20番 小松沢観音 青蓮山(せいれんざん) 清浄院(しょうじょういん)
    〒995-0000 山形県村山市小松沢6500(小松沢観音)
    〒995-0022 山形県村山市楯岡馬場9-9(清浄院) 電話番号:0237-55-6171
  • 第17番 長登(ながのぼり)観音 寒江山(かんこうざん) 長登寺(ちょうとうじ)
    〒990-0701 山形県西村山郡西川町睦合乙142 電話番号:0237-74-3853
  • やまがた観光情報センター
    〒990-8580 山形県山形市城南町1-1-1 霞城セントラル内 電話番号:023-647-2333

参考サイト

山形ものがたり

  • いいもの山形の産業編

  • いいれきし山形の歴史文化編

  • いいながめ山形の自然編

  • いいじかん山形の祭り編